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交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています
交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています
Author: リンフェイ

第1話  

Author: リンフェイ
十月の東京は残暑でまだ汗ばむほど暑く、朝夕だけ秋の気配があり涼しさを感じられた。

 内海唯花は朝早く起きると姉家族三人に朝食を作り、戸籍謄本を持ってこっそりと家を出た。

 「今日から俺たちは生活費にしろ、家や車のローンにしろ、全部半々で負担することにしよう。出費の全部だからな!お前の妹は俺たちの家に住んでるんだから、彼女にも半分出させろよ。一ヵ月四万なんて雀の涙程度の金じゃ、タダで住んで飲み食いしてるのと同じじゃないか」

 これは昨夜姉と義兄が喧嘩している時に、内海唯花が聞こえた義兄の放った言葉だった。

 彼女は、姉の家から出ていかなければならなかった。

 しかし、姉を安心させるためには結婚するのがただ一つの方法だった。

 短期間で結婚しようとしても、男友達すらいない彼女は結城おばあさんの申し出に応えることにした。彼女がなんとなく助けたおばあさんが、なかなか結婚できない自分の孫の結城理仁と結婚してほしいと言ってきたのだった。

 二十分後、内海唯花は役所の前で車を降りた。

 「内海唯花さん」

 車から降りるとすぐ、内海唯花は聞きなれた声が自分を呼ぶのが聞こえた。結城おばあさんだ。

 「結城おばあさん」

 内海唯花は速足で近づいていき、結城おばあさんのすぐ横に立っている背の高い冷たい雰囲気の男の姿が目に入った。おそらく彼が結婚相手である結城理仁なのだろう。

 もっと近づき、内海唯花が結城理仁をよく見てみると、思わず驚いてしまった。

 結城おばあさんが言うには孫の結城理仁は、もう三十歳なのに、彼女すら作らないから心配しているらしかった。

 だから内海唯花は彼がとても不細工な人なのだと勝手に思い込んでいたのだ。

 しかも、聞いたところによると、彼はある大企業の幹部役員で、高給取りらしいのだ。

 この時初めて彼に会って、自分が誤解していたことに気づいた。

 結城理仁は少し冷たい印象を人に与えたが、とてもハンサムだった。結城おばあさんのそばに立ち、浮かない顔をしていたが、それがかえってクールに見えて、人を近づけない雰囲気を醸し出していた。

 目線を少しずらしてみると、近くに駐車してある黒い車はホンダの車で、決して何百万もするような高級車ではなかった。それが内海唯花に結城理仁との距離を近づけされてくれた。

 彼女は同級生の友人と一緒に公立星城高校の前に本屋を開いていた。

 さらに暇な時には、自分でビーズの小物を作り、ネット販売して結構な数を売っていた。

 一ヵ月で、月の収入は安定して四十万稼いでいた。東京で月に四十万の収入があれば、ホワイトカラー階級に匹敵する程である。だから、彼女は姉に毎月十万円の生活費を渡していた。

 しかし、彼女の収入について義兄はまったく知らなかった。彼女は毎月六万円を姉に貯金させて、義兄にはたった四万しかないと言っていたのだ。

 「内海唯花さん、この子が私の孫の結城理仁よ。三十にもなって売れ残りのクリスマスケーキなの。この子は見た目は冷たい人のようだけど、実はとても思いやりのある優しい子なの。あなたが私を助けてくれて、知り合ってからもう三ヵ月経つわ。信じてもらいらいの。出来の悪い孫だったらあなたに紹介したりしないのだから」

 結城理仁は祖母の自分に対する評価を聞き、横目で内海唯花をちらりと見た。瞳は深く氷のように冷たったが、一言もしゃべらなかった。

 おおかた祖母に何度もこう毛嫌いされて、慣れてしまっていたのだろう。

 結城おばあさんには三人の息子がいて、それぞれに三人ずつ子供がいた。つまりこのおばあさんには九人の孫がいるのだ。その孫の中には一人も女の子はいなかったため、内海唯花は結城おばあさんが自分のことを孫娘のように思っていると知っていた。

 内海唯花は少し頬を赤らめた。しかし、彼女はおおらかに結城理仁に右手を差し出して微笑んで自己紹介を始めた。「結城さん、初めまして、私は内海唯花です」

 結城理仁は鋭い目つきで内海唯花を頭から足の先、また足の先から頭まで眺めた。おばあさんが軽く咳をして注意すると、ようやく右手を内海唯花に伸ばし握手をし、低く冷たい声で挨拶した。「結城理仁だ」

 握手をすると、結城理仁は左手の腕時計を見て時間を確認し、内海唯花にこう言った。

 「俺は忙しいんだ。さっさと終わらせよう」

 内海唯花はうんと一声言った。

 結城おばあさんはあわてて言った。「あなた達早く入って手続きしていらっしゃい。私はここで待っているから」

 「ばあちゃん、車で待ってて、外は暑いから」

 結城理仁はそう言いながら、おばあさんの体を支えながら車まで連れて行った。

 内海唯花は彼のその行動を見て、結城おばあさんの言っていた言葉を信じる気になった。結城理仁は一見冷たそうな人だが、思いやりがある優しい人なのだ。

 彼女と彼はよく知らない人同士だが、結城おばあさんは彼名義の購入済の家があると言っていた。彼女が彼と結婚すれば、姉の家から出ることができる。そうすれば姉を安心させることができるし、義兄と彼女のせいで喧嘩することもなくなるだろう。

 彼女は彼とルームメイトのような結婚生活を送るだけだ。

 結城理仁はすぐ内海唯花のところに戻ってきて言った。「行こうか」

 内海唯花はひとこと「うん」と言って、黙って彼に続いて役所に入っていった。

 婚姻手続きをする窓口に着くと、結城理仁は内海唯花にこう告げた。

 「内海さん、もし気が進まないのであれば、取り消しにしてもいいんだ。祖母が言うことは気にしなくていい。結婚は一大イベントで遊びじゃないんだから」

 彼は内海唯花が後悔して取り消してくれるのを期待しているようだった。

 なぜなら彼は会ったばかりのよく知らない女と結婚なんかしたくなかったからだ。
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